日産サンキャット22

サンキャット22はサンキャット26に続くカタマラン(双胴艇)のシリーズである。圧倒的なシェアを持つヤマハに対し、オリジナリティで勝負しようと言うことなんだと思う。この作戦。なかなか面白い。というのもモノハル(普通の船型)より接水面が小さく、走行抵抗少ない。当然ながら燃費良いという大きな特徴を持つのだった。

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こんな形状のハルを持つ

なのになのに! 日産マリーンはあまり意識していないようで、22フィートのフネに135馬力という大出力のエンジンを組み合わせてきた。燃費を聞 くと「おそらく1時間あたり25Lくらいだと思います」。私が以前乗っていたサンクルーズ22で115馬力。18ノット巡航なら20L/1hだった。それ より絶対良いハズ。

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「センターコンソーラー」と呼ばれるタイプ

試乗艇に90馬力仕様を選択し(最高速は28ノット出れば十分)、徹底的に燃費を追求したらいい。20ノット巡航で18L/1hを切れれば相当燃 費良いフネだと言える。というか、そのくらいのポテンシャルを持ってると思う。日産のカタマランにはぜひとも新しい切り口を見せて欲しいです。

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135馬力は背も高い

価格は135馬力とのセットで365万4千円。90馬力のセットだと325万5千円。75馬力でも走れると思うけれど、価格は10万円しか安くならないだろう。だったらパワーに余裕のある90馬力を選びたい。参考までに書いておくと135馬力と90馬力だと50kg違う。重心を低くできるというメリットも大。

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このエンジンなら34ノットくらい出るそうな

クルマと違い、ボートは試作艇と市販モデルの距離が極めて近い。というか、試乗艇は試作艇だと言っていい。おそらく日産の開発担当者も135馬力と組み合わせてみたらオーバースペックだったと感じてるんじゃなかろうか。自分で乗るなら一瞬も迷わず90馬力にする。

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広いバウデッキは良い釣り場所になる

日よけのTトップ(オーニング)は何とアルミ製! 見たらめちゃめちゃ凝った作りになっている。レーシングカーのロールケージか! あれば便利ながら、40万円もするそうな。お大尽なら決して高くない内容なれど、とりあえず買ってから考えたらいい。もっと簡易で安い汎用オーニングもありますから。 

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さすが純正だけあってパイプの取り回しが美しい

ヘルムステーション(操船場所)は二人並んで座れる。シーバスや鳥山を追い掛けて青物を狙うような釣りをするには文句なし。その気になればヘルムステーションの前に一人。エンジンの前に一人、の4人まで快適に座れる。エンジン横も座れるけれど、間違いなくビショビショになるだろう。

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エンジン横のシートは好天用

走るとどうか? ハルの重量が850kgと軽い割に高い剛性を持っている。やはりカタマランなので構造的に有利なんだろう。アメリカ製のセンターコンソーラーのようなガッシリした乗り心地を持つ。ハネるような高さの波じゃなければ、当たりもソフト。30ノットオーバーでも直進安定性良く、なかなか快適。

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ただカタマランの特性上、ハンドルを切るとクルマのような横Gを発生する。転倒するようなことにはならないだろうが、ハンドレールなどを握っていないゲストはバランス崩しやすい。といったことを考えても、小さい馬力のエンジンがおすすめです。ま、センターコンソーラーで移動するときは着席が基本ですけど。

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釣りの相棒にゃ最高でしょう!

意外だったのはスプレーを浴びないこと。基本的に引き波が少ない上、波のさばき方も上手なんだと思う。チョッピーな条件だったにも関わらずキャノピーは完全ドライ。また、カタマラン最大の売りである「停船中のロールの少なさ」に感心しきり。24フィート級に匹敵する安定感でした。

その後、115馬力を試すと「やっぱし馬力低い方がいい」でございます。双胴艇は高速域で転舵すると横Gを出してしまい不安定になる。馬力の低いエンジンなら速度も出ないため安心。そ れにしても燃費良い! 37,8km(約20ノット)で1時間あたり約16L。リーンバーン制御で15%前後実用燃費良くなっているそうな。

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私が先日まで乗っていた先代BF115付きの日産サンクルーズ22は18ノットで1時間20L。20ノットだと22~23Lくらい喰いました。新型BF115なら20ノットで1時間20Lくらいだと思う。おそらく115馬力エンジンの船外機じゃ世界一燃費いい? しかもトルクあるため、回転数だって低い。

 

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日産サンキャット26

サンキャットシリーズは世界的に見ても珍しいカタマラン(双胴)の小型プレジャーボートだった。しかし10年ほど前に販売を休止。以後、絶版モデルとなっていた次第。普通の船型と違い「停船時の左右方向の安定性に優れる」といった特長を持っており、根強いファン層を持つ。

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世界的に珍しいカタマラン(双胴艇)です

日産としても「個性を出したい」ということなんだろう。久々にカタマランのフネを出してきたのだった。実際、すでにこのクラスのフネを考えている人から大注目されてます。ちなみに「最後のサンキャット」となった『7,7』によく似た船型ながら、ゼロから見直したそうな。フネのコンセプトとしては「80%くらい釣り」というイメージ。

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プレーニングすると左右の艇体だけ接水している状態になる

具体的に言うと、サンキャット7,7の場合、バウにカディ(天井高低いものの、昼寝くらい出来るスペース)を持っていたが、サンキャット26は写真のような「釣り座」になっている。ここのスペース、カタマランだけあって26フィートのフネと思えないくらい広い。後述の通り停船時のロールが少なく、立った状態での釣りも可能。

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バウにけっこう広いスペースがあります

キャビンは26フィートと思えないくらいの幅を有す。シートの座り心地も悪くない。窓の位置が低いため、座った状態で外の風景を楽しめる。マリーナステイの飲み会なら余裕で4~5人といったイメージ。トイレは運転席の前。個人的にはサンキャット7,7のようなバウカディ仕様もあったらなぁ、と思う。

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走りはどうか? 徐々にスロットルを開けていくと、排水状態から滑走状態への移行が解りにくい。日本のフネは全般的に明確な差を出さない方向ながら、なかでもサンキャット26は曖昧。これ、ホメてます。海況の悪いときなど、12~13ノットで巡航したいときも少なくない。そんな時、曖昧なフネは扱いやすいのだ。

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15ノット程度で完全なプレーニング状態に入ると、後はスロットル開度とリニアで速度が上がっていく。リラックス出来る巡航速度である22ノットは3500回転。この状態での燃費を聞いてみたら「1時間あたり24Lくらいだと思います」。さすが燃費良いです。ちなみに20ノットなら20L/h。

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普通の艇体のフネと同じくハンドル切ると内傾します

カタマランという構造、接水面積が少ないため、水の抵抗も少ない。だからこそ225馬力エンジンで36ノット出る。逆に考えると燃費にも有利だということ。26フィート級の船外機で1時間20Lは優秀(30ノットだと37L)。というか、燃費じゃ世界トップだと思う。150馬力仕様もラインナップされており、31ノット出るそうな。

37ノット以上出ている、とのこと

気になる「波さばき」性はどうか? 様々な海況で試乗したので、けっこう的確な評価が出来たと思う。穏やかな海況での乗り心地はソフトで快適。しなやかなサスペンションのクルマをイメージしてもらえばよい。ただチョピーな波の時にアクセル開けて走ると、板の上に座ってみたいな感じ。

荒れた時は普通のフネと同じ乗り心地だと考えればよかろう。それより「やっぱりいいですね!」と感じたのが、プレーニングまでの速度域を存分に使えること。普通のフネは排水走行(8ノット程度まで)から、プレーニングに入るまでの速度域(14ノット程度)は海況の悪い日だと使えない。

ゆっくり走るか、飛ばすかの選択になってしまう。過渡領域が曖昧なカタマランなら、荒れた日でも10ノット~15ノットという速度域を使えます。また、最も危険な追い波を受けた時の直進性(リアが横流れすると転覆の可能性出てくる)もタフ。燃費の良さを含め、サンキャット26の大きな魅力だと思う。

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ここからバウのスペースに出入りする。花見や花火にも便利

停船時の安定性はさすが! 揺れ止めのアンカーを入れているような感じ。同じ側に人が偏って乗った時のヒールも驚くほど少ない。気になる人は是非とも試してみて頂きたく。これなら釣りをしている時だって気持ち悪くならないか? そうそう。グリーンの艇体色は評判悪いとのこと。標準のホワイトを見たいもの。

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エンジンが引っ込んでます

オプションでエンジンとバッテリーを併用したエアコンも選択出来るが、およそ100万円! お金持ちにすすめておく。のまた水線長を最大限に確保しながら8m未満(ベイサイドマリーナでは重要)に収めるため、最近の日産艇が得意とする船外機の前置きをしている。

サンキャット26の公式Web

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日産サンクルーズ22

このフネの凄さはフロアプランにある。22フィートというコンパクトなサイズながら、バウに大人が寝られるスペース、個室トイレ、大人3人分のソフトなベンチシート、シンク(清水タンク付き)、スライド式のガラスドア、アフトシャワーなど、本格的なプレジャボートと全く同じ装備を持つ。

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ポーナム26Lと同等以上のキャビンスペース

デザインも秀逸だ。艇体とキャビンのバランスなど素晴らしいと思う。販売力の弱い日産だからあまり話題に上がらないものの、これがヤマハのボートなら相当ヒットしたことだろう。搭載可能なエンジンは90馬力~115馬力。日産ブランドだとホンダ。スズキブランドならスズキ製の船外機が付く。

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ポニョに出てくるフネのよう?

性能は115馬力仕様で29ノット。90馬力仕様だと25~26ノット程度とのこと。4千回転=18ノット巡航だと1時間当たり20Lの燃料消費量になる。500万円台の艇体価格といい燃費といい、ベンツCクラスやBMW3シリーズといった輸入車を買うつもりになれば手が届く。

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ホンダ船外機の信頼性は素晴らしく高い

22フィートということで荒天時はそれなりに気を使わなければならないものの、さすがミニクルーザーだけありバウが全没しても逞しく浮いてくる。加えて完全なキャビンを持つため、どんな状況でも室内はドライ。天候の急変や、冬季のフネ遊びも快適だ。

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ミニ・キャビンクルーザーであります

このサイズだと保管費用は手ごろ。メインテナンスコストだって安く付く(1年に1度のオイル交換と、係留保管なら船底塗装)。フネ入門には最適じゃなかろうか。


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